このカメラは1993年に発売された、ニコンの高級コンパクトカメラです。当時は「プレミアムコンパクトカメラ」が流行していて、CONTAX T2やMINOLTA TC-1など、名機が次々と登場していました。
そんな中でも35Tiは、ニコンらしい光学技術と、工芸品のようなデザインが合わさった、まさに“写真を撮る道具”としてのこだわりが詰まった一台。
今回はこの35Tiの魅力を、デザイン、レンズ性能、操作性などの観点から、じっくり紹介していきます!
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Nikon 35Tiってどんなカメラ?
Nikon 35Tiは、カメラ名にある「Ti」が示すとおり、ボディにチタン合金を使っています。
チタンは軽くて丈夫な素材なので、カメラを守る強さがありつつ、手に持ったときにひんやりとした質感が気持ちいい。しかも、そのマットな光沢がとても上品なんです。
さらに、コンパクトカメラなのでサイズも程よく、持ち歩きやすい。それでいて、中身はニコンが誇る光学技術が詰まっているので、「おしゃれなだけじゃない、実力派のカメラ」というわけです。
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デザインの魅力 — アナログメーターに宿る個性
35Tiの一番の特徴は、上部にあるアナログ針式メーター。
ぱっと見、カメラというよりも、何か古い精密機械のようにも見えます。これは、シャッター速度・絞り・ピントの距離・露出補正などが針で表示される仕組みになっているんです。
デジタル表示が主流の今からすると、ちょっと不思議なデザインですよね。でも、この針の動きがまるで時計の秒針みたいに滑らかで、眺めているだけで楽しくなるんです。
「写真を撮る前の時間も、味わい深い」
そんな感覚を味わわせてくれるカメラなんです。
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レンズ性能 — 35mm F2.8が描く世界
35Tiに搭載されているレンズは、Nikkor 35mm F2.8。
このレンズがまた素晴らしくて、さすがはニコン!と唸る写りをします。
• 開放F2.8は、背景を少しぼかして被写体を際立たせるのにちょうどいい
• 35mmの画角は、人の目に近い自然な視野だから、スナップ撮影にぴったり
特に印象的なのが、色の描写です。
デジタル写真だと色がパキッと強調されることが多いですが、35Tiは光のグラデーションが柔らかくて、淡いニュアンスまで写し取ってくれます。
光が差し込む朝の街角、夕暮れのやわらかな影、ふとした瞬間に浮かぶ表情…。
撮った写真を現像してみると、ただのスナップが物語を感じさせる一枚になっている。そんな体験ができるのが、このカメラの魅力です。
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使い心地 — アナログと直感的な操作性
35Tiは見た目がクラシックなだけじゃなく、操作感もアナログならではの楽しさがあります。
撮影モードは2種類
• プログラムAE(カメラがシャッター速度と絞りを自動で決める)
• 絞り優先AE(自分でF値を選んで、ボケ具合をコントロール)
特に、絞り優先モードでは、レンズ横にあるリングを回してF値を調整します。カチカチっとしたクリック感が手に心地よく、「写真を撮っている感覚」を楽しめます。
さらに、アナログメーターのおかげで、設定をひと目で確認できるので、いちいち液晶画面を見なくても直感的に操作できるんです。
「触るたびに楽しい」
これは現代のデジタルカメラではなかなか味わえない感覚です。
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35Tiは「写真を撮る時間」そのものを楽しめるカメラ
35Tiは、シャッターを切るその瞬間だけでなく、
光を感じて、露出を決めて、ピントを合わせるまでの時間そのものを大切にするカメラです。
デジタルカメラのように、シャッターを押せばパッと結果が見えるわけではありません。
現像するまで、どんな写真が撮れたかわからない。
でもだからこそ、撮ること自体が楽しくなる。
メーターの針を眺めながら、「どんな写真になるだろう」と想像しつつシャッターを切る。
その一連の動作が、まるで小さな儀式のように感じられます。
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おわりに
Nikon 35Tiは、ただ美しいだけじゃない。
• デザインと機能が融合したアナログメーター
• Nikkorレンズならではの確かな描写力
• 直感的で心地よい操作感
どこをとっても、ニコンのこだわりと技術が詰まっています。
そしてこのカメラが一番素敵なのは、「写真を撮るまでの時間」そのものが楽しくなること。